もくじ

見出しは「話のタイトル→本のタイトル」となっております。 ネタバレしまくっているので嫌な人は見ないでね。

箱 - おせっかいな神々

彼は子供の頃に異国風の少年から箱をもらった。その少年が誰なのかは覚えていない。 「この箱には素晴らしいものが入っていてどんな困難もたちまち解決してくれるよ。ただし一度だけ。」 そのようなことを異国風の少年は話していた。

箱を渡された日から彼は幾度となく箱を開けようと思ってはやめるを繰り返してきた。 「あの時開けておけば…」と思うこともあったが箱を開けることはなかった。 平凡な人生を送っていてもこの箱の力を持っていると思うと大抵の不満は癒やされていた。

やがて年老い、病床にある彼は最早身体の一部とさえ呼べる箱を開けてみようと思った。 やがて死ぬであろう彼には不満や未来への希望や欲望は持っていなかったが箱を開けるとどうなるのかだけ気になった。 傍らに置いてある箱を手に取り、何のためらいもなく彼は箱を開けた。

すると天使が現れ彼は天国に召されていった。天使は異国風の少年と同じ顔をしていた。

というお話。その箱は少なくとも私も持っているはず。 時々開けたくなるけど結局開けない彼の気持ちもよくわかる。 そして彼はとても良いタイミングで箱を開けたと私は思った。

宇宙の男たち - 宇宙のあいさつ

宇宙での職務を終えた老人は故郷である地球への帰還を願い出る。 そのため若いパイロットが宇宙船で老人を連れて地球へ帰る途中の船内が舞台のお話。

若者と老人は互いに冗談を飛ばし合いながら地球を目指していたが宇宙船に隕石がぶつかり 修復不可能な程の損傷を受けてしまう。通信機器もダメージを受け連絡手段も失ってしまった。 つまり帰還が不可能になり二人はやがて宇宙の塵となる運命にあった。

しかし彼らはすんなりと運命を受け入れ、危機的状況にも関わらず冗談を飛ばし合う。 地球を出た瞬間からこのような事故に遭う覚悟は出来ていた。

若者は名前を書かずに両親宛てに遺書をしたため小型ロケットで地球へ送った。 若者は孤児で親はいなかったが他の行方不明パイロットの帰還を待つ家族のためだった。

老人と若者の間には長い航行から親子のような絆が芽生えていた。 安らかな死を待つために冬眠剤なるものを服用し、眠気がやってくると どちらからともなく別れの言葉をかけあった。

あとは死を待つのみという暗い状況にも関わらず男たちが達している境地が爽やかさを演出している。 目標を全うするとはこういうことなのか。

入会 - どこかの事件

暇を持て余した老婦人が刺激を求めてとある会に入会する。 会員は電話で指示されることを行うというもの。

入会後、会から電話がかかってきて指示を受けたものの内容は至極平凡なもの。 目的も知らされぬままその指示を遂行すると後日、感謝の言葉とともにそれなりの大金を渡された。

しかし後になって自分の行動が偶然を装った計画殺人に関与していることを知り老婦人は恐ろしくなり会を脱退する。 脱退後、安堵したものの知らなかったとは言え自分が殺人に関わったという事実がたまらない刺激であることを身をもって体感してしまった。 それから老婦人はボケることもなく、刺激が忘れられずかかってくることもない会からの電話を待ち続ける。

ボケるくらいなら脳みそ楽しませた方が良いかもね!

少年と両親 - 未来いそっぷ

両親から金をせびりまくる不良少年。自分がこんな風に育ったのは両親のせいだと騒ぐ暴れる。 そしてお決まりの台詞。「誰が産んでくれって頼んだんだ」

その時、第三者の声。「わたしが頼んだ」 どうやら両親は子が成長したら脳以外の臓器を売る契約をその第三者と交わしていたらしい。 憐れ不良少年。読み手としてはそのシュールな場面に「頼んでたんかーいw」と突っ込まざるをえない。

ある夜の物語 - みらいいそっぷ

とあるクリスマス・イブ。友人も恋人もいない寂しい生活を送っている青年を不憫に思いサンタクロースが願いを叶えるためにやってきた。 青年は色々と考えたがサンタクロースがわざわざ来てくれたことを嬉しく思い、既に心が満たされていた。

自分よりももっと不憫な人がいる、例えば近くに住んでいる病気で寝たきりの少女がいる。 そこへ行って願いを叶えてあげてほしいと告げるとサンタクロースは承知して消えていった。 青年の心から寂しさが消え、どこか前向きな気持ちで眠りについた。

その後サンタクロースは似たような理由で行く先々で願いを叶えようとするも みんな「こんな自分を気にかけてくれる」ことを知りそれに満足して自分のためにサンタクロースを使わず 別の人のところへ行くことを勧められ、結局時間切れで世俗的な願いを叶えることなくサンタは家路につくというお話。 非常に暖かみがあって人気があるのも納得なお話です。

ひとつの装置 - 妖精配給会社

国立研究所の所長が莫大な予算と私財を投じ、ひとつの装置を作り上げた。 円筒形で中央部にボタンが付いており、外側にはアームが一つ付いている。 「これは人類に絶対必要な何もしない装置です」と発表し町の広場に設置した。

その装置のボタンを押すとアームがボタンを元に戻す、それ以外の動作はしなかった。 何か意味ありげだがその意味を汲み取る事もできず、そもそも意味があるのかも怪しく本当になにもしない装置と言えた。

やがて緊張状態にあった各国で核のボタンが押されて世界から生物が消えた。 全ての建物が瓦礫を化してもなにもしない装置はあらゆる衝撃に耐え抜いた。 ボタンが押されなくなってから千年が経過したのを装置が確認すると録音装置が再生を始めた。 人類と文明への追悼の言葉を述べた後に葬送曲が重々しく流され装置は完全に動かなくなった。

というお話。なにもしない装置は墓標のようなものですた。非常に人間的な用途の装置ですな。 なんの変化も無い装置のボタンも取り返しのつかない変化のある核のボタンも人類は押す。 一時の感情の前には倫理や哲学は塵にも等しい存在になるのかもしれない。